Works - Exhibitions
Glass Upcycle “Re-born” series
Akiko NODA, 2021
割れたバカラをアップサイクルする新しい取組み、Re-bornシリーズをKOGEI Next展(六本木ヒルズ、11/5-6)で発表します。
品位に満ちたグラスや花瓶としての役割を終えたガラスを、枯れゆく葉や実としての幽玄な美しさに変えて、新たな人生、永遠の命を吹き込む―。
モチーフである枯葉や蓮実は、それ自体が生態系のRe-bornの仕組みの一環でもあり、両方の意味で、「循環」の重要性を伝えています。
私にとってこのプロジェクトは一つのターニングポイントとも言える意味深いものに。
自然と文化が豊かな京都洛北の地で生まれ育った私は、毎日、自然と対話しながら沢山の発見、喜び、安らぎを頂いてきました。
今も山や海で戯れるのが一番の幸せであり、自然は私の美意識、制作の源でもあります。
そんな自然への敬愛から、まだ環境問題も今ほど真剣に取り上げられずSDGsも始まっていなかった頃から同志社大学院では環境マーケティングで修士論文を執筆し、新聞社勤務時代も、植樹プロジェクトや木の図鑑を企画制作するなど、一貫して私なりに環境問題に携わってきました。
多忙だった広告代理店を辞め、アートの道に入ったのも、時間の在り方に疑問を持ち、移ろいゆく自然の美しさに気付くことができる、ゆったりとした時間の大切さを伝えたいと思ったからでした。
そんな思いから、東京藝大院の時から、蓮の一生や、枯葉、月など、人の生き様や記憶、永遠と一瞬のはかなさと強さを呼び起こすような植物等をモチーフに制作してきました。
人も植物も地球の一生物であって、同じように人生がある―。
「自然と共に生きる」ことを作品を通じて表現できたらと考えています。
今回のre-bornシリーズでは、アップサイクルというわかりやすい形で、環境問題にアート作品でも取り組めたことは、自分のライフワークの一つのターニングポイントと感じています。
以前からアップサイクルするガラスとして、いろいろなガラスに取り組んでいます。
板ガラスや、電球ガラス、夏の個展では、高級瓶ガラスを再利用して制作した海、水、舟を表現したCastingシリーズを発表しました。
しかし、こういった工業ガラスは融点が高く、硬い性質を持っています。
今回、バカラを選んだのは、30%前後の高い酸化鉛を含み、高品質なガラスとして有名であり、繊細な技巧も耐えうる可能性を感じたから。
時代によって鉛含有率が異なると考え、オールドバカラ、1936年以前、1936-69年、90年以降の現在のバカラとそれぞれ実験してみました。
ガラスによって、溶ける温度も、徐冷する温度も異なり、プログラムをすべて変え、一度一分の調節する試行錯誤を繰り返しました。
モチーフとして選んだ植物は、ハス、ブナ、サクラ。どれも古代から日本に自生する植物で、私の住んでいる近くで見られる身近な存在です。
ブナとサクラは里山に欠かせない樹木であり、里山保全の重要性も伝えられたらと考えました。
また、私が主にやっているキルンワーク技法では石膏を多用し、石膏型をガラスと一緒に焼いて崩してしまうため、一回しか使えず非常に手間がかかりますが、これもできる限り、他の大型作品などで再利用しています。
ただいま、制作の過程をYouTubeでご覧いただけます。
会場でぜひ実物をご覧いただけたらと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=U4qMGGLmc5Q
■「KOGEI Next」展
2021年11月5日(金)、6日(土) 11:00〜20:00
会場:六本木ヒルズ「Hills Cafe / Space」
六本木ヒルズ 森タワー ヒルサイド 2F(森美術館エントランス前)
※11/6には脳科学者・茂木健一郎氏と、京都女子大学准教授・前﨑信也氏の対談イベントなどもあります。
https://kogei-next.jp/event/211105/
出展作家(五十音順)
大竹亮峯、織田隼生、鈴木祥太、つのだゆき、土岐謙次、野田朗子
彦十蒔絵、本郷真也、松本涼、前原冬樹、満田晴穂
主催 古美術 鐘ヶ江、株式会社クロステック・マネジメント
協賛 株式会社ゴールドウイン
協力 京都女子大学、京都芸術大学、一般社団法人アートハブ・アソシエーション
DESIGNART TOKYO 2021